
罹災証明書って大事なんだよね?でも何をどうしたらいいの?
という方向けの記事です。



被災した時にものすごく大事な書類です。いろんな保障を受けるために必要なんですよね。
この記事でわかることは..
- 罹災証明書の入手方法
- 罹災証明書の利用先
- 罹災証明書は火災保険・地震保険に必要なのか不要なのか
災害救助法による保障や「被災者生活再建支援制度」を中心にまとめている記事→【【地震保険】災害がいざ起きたら?被災後の国の保障は?】
住まいに関する国の保障を中心に知りたい方→【【国の保障】災害時の国の保障まとめ - 住まい編 –】
地震保険の事をまとめている記事→【【地震保険】とは?必要か不要か判断材料が欲しい。】
【罹災証明書】わかりやすく、ちゃんと知りたい。
まず、条件をクリアすれば誰でも入手できます。
条件はそれほど厳しくなく、自宅が被災した方であれば入手できます。難しくもありません。
ただ欠点はあります。それは入手できるまで時間がかかることです。
ちなみに、「被災証明書」というものがあります。罹災証明書とは全くの別物です。
罹災証明書 | 被災証明書 |
---|---|
被災の程度を証明 | 被災事実を証明 |
住宅を現地調査または航空写真で調査 | 住宅(&住宅以外)を写真等で調査 |
公的保障(支援)に利用 | 利用ケース不明※ |
※被災証明書の利用ケースを役所に問い合わせたところ、役所の方もわかりませんでした。私が聞いた役所がたまたまわからなかっただけかもしれないので、情報入手しましたら追記したいと思います。
そもそも罹災証明書とは?


「罹災証明書」は、とにかく「いろいろな公的保障(支援)」を受けるために必要なものです。
給付 | 被災者生活再建支援金、義援金など |
融資 | (独)住宅金融支援機構融資、災害援護資金など |
減免・猶予 | 税、保険、公共料金など |
現物給付 | 災害救助法に基づく応急仮設住宅、住宅の応急修理など |
その他、たとえば、「災害弔慰金」「災害障害見舞金」「保育所等の保育料減免」「小・中学生の就学援助措置」「教科書等の無償給」など。
災害発生から2~3か月以内という申請期限もあるので、すぐに申請しましょう。
前提条件
地震保険と比較しながら罹災証明書を入手するための前提条件を確認していきます。
地震保険の場合は、「保険金」をもらう(入手する)ための条件です。
結論、前提条件は、「自宅が被災」&「自宅の被災程度が6区分のどれか」になることです。
6区分の認定方法は、下の方の【6区分の認定調査方法】を参考にしてみてください。
地震保険 | 罹災証明書 | |
---|---|---|
【条件】どうなっていればいい? | 自宅が 「全損」「大半損」「小半損」「一部損」のどれか | 自宅が「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」6区分のどれか |
両者の一番の違い | 「全損~一部損」のどれかによってもらえる金額が変わる | 「全壊~一部損壊」のどれになっても罹災証明書を入手できる |
調査する人 | 保険会社 | 市区町村 |
調査基準 | 保険約款 | 災害対策基本法 |
調査を受ける人 | 被災者のうち保険契約者 | すべての被災者(世帯主、所有者) |
調査するもの① | 建物、家財 | 建物 |
調査するもの② | 主要構造部(基礎・柱・壁・屋根)※木造住宅の場合 | 屋根、柱、壁、基礎、床、天井、建具、設備 ※木造住宅の場合 |
2次調査 | 必要な場合にあり。 | 必要な場合に、あり。 |
どうなる? | 地震保険金がもらえる | いろいろな公的保障(支援)を受けられる |
「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」のどれか認定されると、罹災証明書を入手できます。
- 全壊:損害割合50%以上
- 大規模半壊:〃40%以上50%未満
- 中規模半壊:〃30%以上40%未満
- 半壊:〃20%以上30%未満
- 準半壊:〃10%以上20%未満
- 一部損壊:〃10%未満
自宅が何かしら被災していれば罹災証明書はもらえそうだね。
ただ、いざ保障(支援)を受けるときに、違いが出てきます。もらえるお金の額が変わります。
詳しくは下の方の【何に使える?】を参照ください。
6区分の認定方法は、下の方の【6区分の認定調査方法】を参照ください。
申請手続きの流れ


市区町村にある「罹災証明申請書」、運転免許証などの「本人確認書類」と「被災状況のわかる写真※可能な場合」を市区町村に提出します。
※万一、本人確認書類がなくても市区町村に相談すれば大丈夫なようです。
※「委任状」があれば本人以外の人が申請できます。
※必要書類は、市区町村によって多少異なります。
市区町村による自宅調査。目的は、「被害の程度」を判定するためです。
現在は調査の迅速化のために『航空写真』を活用する場合もあるようです。
調査は1次と2次、計2回おこないます。
被害の程度を「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」のどれか判定します。
判定後、「罹災証明書」を受け取ります。
※基本は郵送 or 役所など専用会場にいく or 避難所で直接受け取ります。
受け取れるまでどのくらいかかるの?
たとえば2019年秋に台風15号、19号などの被害に相ついで見舞われた千葉県市原市では、計約1万1500件の証明書の発行申請があり、発行まで約1か月かかったそうです。
6区分の認定調査方法


6区分のどれか認定してもらうためには、被災した自宅の調査が必要です。
罹災証明書の認定調査では、災害は「地震」「水害」風害」「(液状化などの)地盤被害」の4つに分けられています。
調査は細かくて大変なんでしょ?
たしかに少し細かいです。けれども、多くの被災者が罹災証明書の発行を待っているため、認定はスムーズにスピーディーにおこなわなければいけません。そのための「基準」があります。
まずはざっくりですが「基準」とは、以下のとおりです。
損傷部分/全体 × 部位別の構成比(%) = A
Aが「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」の6区分のうちどれかになるように認定していきます。
- 部位別の構成比とは
-
建物の「屋根」「外壁」「柱」など建物を構成するものごとに%数が決められています。部位とは「屋根など」の事で、構成比とは「%数」の事。
災害の種類ごと&建物構造(木造など)ごとに「部位別の構成比」が変わります。たとえば、地震×木造の組み合わせの場合は、屋根15%、外壁75%、基礎10%。
つまり、地震の被害があった木造建物は、外壁に被害があったときに「全壊」認定されやすくなります。
ややこしい..
あくまで基準ですし、現場現場で臨機応変に認定していくようです。
また、「部位別の構成比」は災害の種類&建物構造(木造)の組み合わせでけっこう変わります。
水害&木造の場合は、屋根15%、柱15%、床10%、外壁10%、内壁10%、天井5%、建具15%、基礎10%、設備10%
うんざり..
このように、うんざり度が保険といい勝負ですね(笑)細かいところまで覚えていなくてもいいと思います。
建物全体のうち何%分の損傷があるかどうかで決まると理解しておけばいいと思います。
このあとに書かれている、災害の種類ごとの認定調査方法は、すこしマニアックです。いろいろ割愛しながらなるべくシンプルにしたつもりですが、興味のある方だけ見ていただければいいと思います。
もっと興味のある方は、内閣府「防災情報のページ」を見てみてください。
地震




地震の場合、「1次調査」「2次調査」の前に、木造と非木造ごとに「全壊」認定をおこないます。
「全壊」にならなかった場合は、1次調査に移って、さきほどの部位別の構成比を使って認定していきます。
2次調査は何のため?
2次調査は、1次調査結果に納得できなかった被災者のためにあります。希望する被災者は、2次調査の依頼。たとえば「大規模半壊」が「全壊」になることを祈って、もういちど調査をしてもらうんです。
1次調査と2次調査の違いは?
1次調査と2次調査の違いは、調査の深堀り度合いです。具体的には、1次調査は「外観」「傾斜」「基礎」といったものを“建物の外側から”調査します。2次調査はそれに加えて「床」「内壁」「天井」などを“建物の内側から”も調査します。
水害




調査方法は、地震の場合とおなじようにおこないます。
水害の場合の特徴は、「木造(2階建て以下)」「木造(3階建て以上)」「非木造」の3つによって調査の流れが変わることです。
「木造(2階建て以下)」のみ、1・2次調査が用意されています。「木造(3階建て以上)」「非木造」は、いってみれば1次調査のみということです。
水害の場合は、水に浸かっているか浸かっていないかという比較的に判断しやすいので、1次調査のみにしてるのではと思っています。
風害




調査方法は、地震の場合とおなじようにおこないます。
風害の場合の特徴は、木造だろうが非木造だろうが1次も2次もないことです。
風害は、いちばん上の「全壊」かいちばん下の「一部損壊」かのどちらかになりやすい印象です。
「傾斜」が外壁または柱の傾斜1/60以上(※2cm以上)ではない限り、「大規模半壊」「小規模半壊」「半壊」「準半壊」は認定されにくいです。※個人的な感想です。
地盤被害




地盤被害の原因はいろいろです。2021年7月3日静岡県熱海市で起きた土砂土石流も「液状化など地盤被害」にあたりますね。
調査方法は、地震の場合とおなじようにおこないます。
地震の場合とおなじように、1次2次もありますし、わりと丁寧に調査してもらえる印象です。※個人的な感想です。
何に使える?
給付 | 被災者生活再建支援金、義援金など |
融資 | (独)住宅金融支援機構融資、災害援護資金など |
減免・猶予 | 税、保険、公共料金など |
現物給付 | 災害救助法に基づく応急仮設住宅、住宅の応急修理など |
「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」のどれか認定されると罹災証明書を入手できて、いろいろな保障(支援)を受けられます。
ただ、「全壊」~「一部損壊」の方すべて一律の保障ではありません。
「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」によってもらえるお金が変わる「被災者生活再建支援金」という保障を紹介します。(※「半壊」「準半壊」「一部損壊」はもらえません)
被災者生活再建支援金(最大300万円)
被災者生活再建支援法による「被災者生活再建支援金」というものがあります。
参考:内閣府 被災者生活再建支援制度の概要
誰がもらえる?
誰でももらえるのでは?
自宅が以下の状態になった世帯だけです。
- 自宅が全壊
- 自宅が半壊して、やむを得ず解体
- 自宅で住む事が難しく長期避難している
- 自宅が大規模半壊
- 自宅が中規模半壊
- 長期避難とは
-
避難指示等により長期間避難を余儀なくされていること
いくらもらえる?


災害時に300万円もらえるというアレだ
どこかで耳にした事があると思います。ただ、注意したいのは、最大300万円であることです。
また、自宅の再建方法(=建設・購入 or 補修 or 賃借)によって金額が変わります。
表のとおり、①②➂と④と⑤によって、もらえる金額が変わります。
- 全壊(損害割合50%以上)
- 解体
- 長期避難
- 大規模半壊(損害割合40%台)
- 中規模半壊(損害割合30%台)
さきほどの【誰がもらえる?】の世帯に連動していますね。
- 最大300万円
- 最大300万円
- 最大300万円
- 最大250万円
- 最大100万円
表に書いてあるとおり、「建設・購入」する場合は、もらえるお金が上乗せされます。「補修」「賃借」の場合は、上乗せされるお金が減ります。
いくらもらえる?<都道府県独自支援>
最大300万円ではないの?
実は、「被災者生活再建支援法による支援金」とは別に、独自の支援金を用意している都道府県ががあります。
つまり、300万円+300万円=最大600万円がもらえる可能性があります。
もらえる条件は、自宅が「全壊」「解体」「長期避難」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「床上浸水」「その他」のどれかになることです。
「被災者生活再建支援法による支援金」とは別に用意している都道府県と、「被災者生活再建支援法による支援金」の代わりに用意している都道府県があります。
ちなみに東京都は「とは別に(=併給)」でした。「全壊」「解体」「長期避難」の場合、300万円+300万円=最大600万円もらえる可能性があります。


兵庫県は、「とは別に」で、しかも独自に600万円がもらえるようです。つまり、300万円+600万円=最大900万円ですね。※年額5,000円の兵庫県住宅再建共済制度(愛称:フェニックス共済)加入者が対象
残念ながら独自支援制度がないのは、富山県、石川県、大阪府、奈良県、香川県、高知県の6府県でした。※令和4年度時点
そのほか道府県について気になる方は→「令和4年度都道府県独自支援制度」
条件
主な条件は2つです。
- 市町村内で10世帯以上が住宅全壊
- 都道府県内で100世帯以上が住宅全壊
この条件をクリアすると、さきほどの①~⑤の世帯が支援金をもらえるようになります。
申請期限
- 基礎支援金=災害発生日から13ヶ月以内
- 加算支援金=災害発生日から37ヶ月以内
基礎支援金は、約1年。加算支援金は、約3年。
申請に必要なもの
- 支援金支給申請書
- 住民票など
- 罹災証明書など
- 預金通帳の写し
- 契約書類(住宅購入、補修、賃借)
窓口は、市区町村です。
申請から受取りまでの流れ
都道府県が被災者生活再建支援法の適用 → 都道府県から国・市区町村・支援法人に報告 → 市区町村が罹災証明書を交付 → 被災世帯が支援金の申請 → 市区町村が受付 → 都道府県がとりまとめる → 支援法人が受付 → 支援法人が被災世帯に支援金を支給
もっと早く入手できないの?
災害時の支援金受給などに必要な「罹災(りさい)証明書」の発行手続き迅速化のため、内閣府は、自治体と損害保険会社の連携を推進する。災害時には証明書を発行する自治体と、保険金を支払う損保がそれぞれ被災家屋を調査しており、これらの一本化を進める。2022年度に一部の自治体の先行事例を調査し、普及を図る。
防災ニッポン「罹災証明書手続きで内閣府が自治体と損保の連携促進」
罹災証明書を迅速に発行できるように取り組んでいるみたいですね。
企業とちがって国や役所は動きが遅くなりがちですが、改善はしているようなので期待したいです。
火災保険や地震保険に必要なの?
不要です。
ただ、ケースバイケースで提出を求められることも稀にあるようです。いずれにせよ、罹災証明書を入手しておいて損はないですね。
あとがき
国のいろいろな保障(支援)を受けるのに一苦労ですよね。手間だけでなく、時間もかかります。
明日は我が身の精神で。
日頃から災害に備えることが大事だと思います。
思い立ったが吉日です!